トゲを捨てる
トゲを捨てる(とげをすてる)
本質となるものを捨てる、の意。
ティルトレーズの民話『トゲ捨てクルム』が由来。
目先のことにとらわれ、何か大事なものを失おうとしている人に「トゲを捨てるなよ」と声をかけたりする。
元になった民話(『トゲ捨てクルム』)のあらすじ
皆に身体の模様の美しさを絶賛されるタマクルムがいた。自身でも模様の美しさに酔いしれていたが、トゲ(クルムトゲ)にはその美しい模様がなく、トゲのせいでせっかくの美しい模様が台無しになると考えて、切り落としてしまった。それからは、「クルム」として見られることがなくなり、誰にも相手にされなくなってしまった。
訳注
クルム:小型の水棲生物。尾びれの前にある大きなトゲ(クルムトゲ)が特徴。丸っこい体型につぶらな瞳、性質は穏やかで知性も高く、好奇心旺盛で人にもよく馴れる上に、種ごとに非常にバリエーション豊かな模様・色彩を持つため、古代から親しまれてきた。熱烈な愛好家が多く、「クルムの集い」なる世界的なクルム愛好組織があるほど。
参考文献
『生物種類別ことわざ辞典「クルム」』(ディレル・アーティ)
『トゲ捨てクルム』(ミーズ・ペラグル)
『クルムの登場する神話・伝説・民話集』(リルカ・アルール)
類義:「宝剣を守って死ぬ」(ラヴェニール文明)
ボフリに遭遇する前にリディンに噛まれよ
ボフリに遭遇する前にリディンに噛まれよ(ぼふりにそうぐうするまえにりでぃんにかまれよ)
早めに小さな失敗から学んでおけば、大きな失敗をせずにすむ、の意。
レクール族の教え。
訳注
ボフリ:大型の水棲生物。肉食性で、ソウコウリディンなどを捕食する。巨大な牙が特徴的。非常に気性が荒く、古から漁師やダイバーに恐れられており、「気性が激しい」「凶暴」「乱暴」の代名詞的存在となっている。
リディン:世界中の海や川、湖などに生息する、甲殻に覆われた身体を持つ水棲の捕食生物。1cmにも満たない種類から、3mを超える巨大な種までいる。最も繁栄しているグループの生物であり、確認されているだけでも3万種以上で、「現代」でも発見され続けており、10万種以上は確実視されている。身は美味で、古代より漁業の対象として非常に重要視されてきた。
参考文献
『生物種類別ことわざ辞典「ボフリ」』(ディレル・アーティ)
『生物種類別ことわざ辞典「リディン」』(ディレル・アーティ)
『レクール族の知恵』(キール・レヴィルク)
類義:「子供のうちにモリウチムシに刺されれば、大人になってからヴァルードに殺されずにすむ」(ザヴァール族)
類義:「大事な子にはグムーヴを触らせよ」(パディア)
子供のうちにモリウチムシに刺されれば大人になってからヴァルードに殺されずにすむ
子供のうちにモリウチムシに刺されれば大人になってからヴァルードに殺されずにすむ
(こどものうちにもりうちむしにさされればおとなになってからう゛ぁるーどにころされずにすむ)
小さな失敗から学んでおけば、大きな失敗をせずにすむ、の意。
ザヴァール族に伝わる教訓。
訳注
モリウチムシ:前脚をモリのように突き出し、獲物を捕らえる大型の虫。虫とはいえ、下手な扱いをして攻撃されれば、皮膚に穴が空くくらい、鋭く力強い。子供のうちに、モリウチムシで痛い思いをしておけば、大人になってからも、ヴァルードなどのような危険な動物を侮って、下手に刺激して殺されるようなことにはならない、という教え。
ヴァルード:巨大な牙と敏捷な動きで恐れられる大型の肉食獣。
参考文献
『生物種類別ことわざ辞典「モリウチムシ」』(ディレル・アーティ)
『生物種類別ことわざ辞典「ヴァルード」』(ディレル・アーティ)
類義:「ボフリに遭遇する前にリディンに噛まれよ」(レクール族)
類義:「大事な子にはグムーヴを触らせよ」(パディア)
斧を持たない者の言葉
斧を持たない者の言葉(おのをもたないもののことば)
「信用に値しない言葉」という意味の、ザヴァール族でよく使われる言葉。
「斧」は、「武器」「意志」そして「戦う力」を意味する。つまり、戦う力(勇気)の無い者の言葉、の意。
ザヴァール族では強いということが肯定的に捉えられ、(身体的にも精神的にも)弱い事は恥ずべきこととされている。そのため、「斧を持たない者の言葉」とは、戦う力の無い弱者が、臆病さゆえに、それを隠す為もしくは媚びる為に発する言葉、というような意味合いになる。
参考文献
『武器言辞典』(レヴァーク武器博物館 / 編)
ボフリをクルグと見間違う
ボフリをクルグと見間違う(ぼふりをくるぐとみまちがう)
致命的なミスのこと。
クルグ類とボフリ類は、ぼてっとしたシルエットがよく似ている為、視界のあまりきかない水中では見間違いやすい。
そして、クルグ類は穏やかで人畜無害な生物だが、ボフリは非常に攻撃的な生物であるため、ボフリをクルグだと勘違いするのは、命に関わる結果を招きかねないことから。実際に、研究者やダイバーなどが「ボフリをクルグと見間違う」事故に遭うこともある。
訳注
クルグ:水棲の大型生物。海草食の種が多いが、リディンなどを好んで捕食する種もいる。クルグ類はいずれも穏やかな性質で、人間にとって危険な種はおらず、また、人なつこく、一緒に遊びたがるので、ダイバーなどに絶大な人気を誇る。
ボフリ:大型の水棲生物。肉食性で、ソウコウリディンなどを捕食する。巨大な牙が特徴的。非常に気性が荒く、古から漁師やダイバーに恐れられており、「気性が激しい」「凶暴」「乱暴」の代名詞的存在となっている。
参考文献
『生物種類別ことわざ辞典「ボフリ」』(ディレル・アーティ)
『生物種類別ことわざ辞典「クルグ」』(ディレル・アーティ)
牙を愛でる
牙を愛でる(きばをめでる)
身勝手なこと。
本来は、「ボフリ嫌いが牙を愛でる」だったが、省略されて、今のようになった。
ボフリは凶暴なので嫌われているが、嫌いながらも人類はボフリの立派な牙や毛皮を獲り、工芸品、装飾品などにして高額で取引をして喜んでいる。そのことを批判した言葉が語源。
「牙嫌いの牙愛で」ともいう。
訳注
ボフリ:大型の水棲生物。肉食性で、ソウコウリディンなどを捕食する。巨大な牙が特徴的。非常に気性が荒く、古から漁師やダイバーに恐れられており、「気性が激しい」「凶暴」「乱暴」の代名詞的存在となっている。
参考文献
『生物種類別ことわざ辞典「ボフリ」』(ディレル・アーティ)
『ことわざから辿る人禍』(人禍記念博物館)
類義:「牙嫌いの牙愛で」